競馬における血統の重要性とは?よく耳にする血統やその特徴、種牡馬や牝馬についても詳しく解説!
「競馬はブラッドスポーツである」という言葉があるように、競走馬の血統と能力は密接な関連を有していると考えられてきました。
近年の研究によれば、競走馬のレースタイムに及ぼす両親からの遺伝の影響は10-20%程度に過ぎず、残りは妊娠中の母体内の影響や生後の子馬を取り巻く環境によるとされますが、それでもなお競走馬の能力に血統が一定の大きな割合で寄与しているという事実があります。
生産者が血統を意識して交配を行い、馬主が血統を意識して競走馬を購入することはもちろん、一般の競馬ファンが予想を行う際にも、しばしば競走馬の血統をその要因に含めていることは明らかです。
従来、競走馬の血統という際には父側に大きなウエイトをかけて語られることが多かったのですが、アメリカやイギリスの研究によると、競走馬の遺伝的な素質は母馬から55〜60%を、父馬から40〜45%を受け継ぐと報告されています。
競走馬については、いかなる血統構成をしているかが競走生活において、そして引退後の余生において大きく影響してきます。
とくに余生については、競走成績に見るべきものがない馬であっても、競走成績や繁殖の実績に優れた馬の近親であるというだけで種牡馬や繁殖牝馬として遇されることが多々あります。
また、そのような馬が実際に優れた繁殖成績を挙げることもしばしばります。
今回はそんな血統について解説していきたいと思います。
競走馬「サラブレッド」
馬には、馬車をひく品種や、障害を跳ぶことに優れた品種など様々な品種がいますが、その中でも特に走ることに優れた品種がサラブレッドです。
ここでは、サラブレッドについてご紹介していきます。
現在、日本の平地競走の競走馬は、ほぼすべてサラブレッド系の馬たちで、長年に渡り品種改良を重ねて速く走ることができるように作り上げられた「サラブレッド」がその速さを競う競馬は、血統のスポーツであるとも言われます。
生産・育成・調教の過程を経てレースへと出走し、優秀な結果を残した競走馬は、やがて生産の場で次の世代の優秀なサラブレッドの誕生へと繋がっていきます。
サラブレッドの一生
サラブレッドは年明けから初夏にかけて生産牧場で生まれ、生後1時間以内に自分で立ち上がります。
0歳の仔馬のことを当歳馬といい、生後半年程度で母親と仔馬は別々の部屋に分けられ離乳されます。
仔馬は広い放牧場を走り回り、競走馬としての基礎体力を自ら養います。
1歳の秋ごろになると、馬具の装着から始めて、最後には人を背に乗せて走ることができるよう、数週間かけて丹念に一つ一つ教えこみ馴れさせます。
これが騎乗馴致です。
騎乗馴致を終えた馬たちは、いよいよ競走馬としてデビューするため、本格的なトレーニングに移ります。
競馬場に入厩した馬たちは調教師の管理の下、デビューに向けての調教を重ね、レースに出られるかどうかを審査する「能力試験」に挑みます。
「能力試験」に合格すると、ようやく競走馬としてデビュー戦を迎えることができます。
早い競馬場では4月から「新馬戦」という2歳馬たちのデビュー戦が始まり、未来のスターホースを目指し、本格的に競走馬としての日々が始まります。
そして引退後は、成績の優秀な牡馬は種牡馬、牝馬は繁殖牝馬となり、次の世代の優秀な競走馬へと繋がっていきます。
引退馬の中には、乗馬クラブなどに引き取られ、乗用馬としてセカンドライフを送る馬たちもいます。
種牡馬
種牡馬とは、繁殖用の牡馬のことで種馬ともいいます。
牛・豚・羊などの畜産では優秀な種牡の精子を採出して凍結保存することが許されていますが、競走馬に代表される馬産は一般的に人工授精や凍結精子の利用などによる人工的な妊娠手段を拒んでいます。
凍結した精子は保存や運搬、売買が容易に行えますが、馬産においては常に生きた種牡馬が生きた繁殖牝馬に直接交配をする必要があります。
したがって、優秀な種牡馬があっても繫殖牝馬にとって移動不可能な地域にいては交配が行えず、いずれは寿命で死んでしまうため、生産界は常に新しい優秀な種牡馬を創出し発見する必要があります。
また、競走馬の場合、交配が行われてから子供が誕生して競走年齢に達して一定の成績が判定されるまでに4年~5年ほどの時間を要することから、新しく種牡馬になったものが優秀であるかそうでないか判明するまでにタイムラグが生じます。
これらの事情により、種牡馬の市場は他の畜産市場よりも流動的です。
種牡馬の選定
サラブレッドやアングロアラブなど、競走馬として主に用いられる種の場合、競馬開催の根本に優秀な種を選別するという目的があることから、基本的に競走成績優秀馬が種牡馬になっています。
但し、競走成績が優秀でなくとも、優秀な身体能力を持っていると判断されたり、活躍馬の近親など血統が優れているなどの要因があると種牡馬になることが多いです。
成績優秀であるからといっても必ずいい産駒が生まれるとは限りません。
競走馬時代は大活躍したオグリキャップが引退後種牡馬となりましたが、スターホースという事で当時は話題となり、種付けの申込数も多数ありました。
しかし、産駒の成績が芳しくなく、近年は勝馬どころかその地を持つ馬ですら見ることは珍しいです。
また、ラムタラはその優れた競走成績から、44億円という当時としては最高額のシンジケートが組まれましたが、これといった活躍馬を出すことができず、購入時から大幅に値を下げて売却されています。
また、種牡馬は生産界からの需要の問題もあり、一概に実績を残せば種牡馬になれるわけではありません。
2000年以降でも、交流GI・JpnI計7勝をあげたブルーコンコルド、菊花賞・メルボルンカップを優勝したデルタブルース、GI・JpnI含め3勝したサクセスブロッケン等は引退後に種牡馬入りしていません。
逆に全く競走成績が伴わなかった馬が種牡馬として大成するという事もあります。
有名な例はミルジョージや競走実績もなくミルジョージの代替的な存在として扱われたもののGI馬4頭を出したマグニテュード、牧場所有の当て馬兼種牡馬でありながら、優駿牝馬の優勝馬コスモドリームを出したブゼンダイオーのような例もあります。
近年では競走不出走のエイシンサンディが、地方競馬で数多くの重賞優勝馬を出している例があります。
海外での例としてはダンジグやミスタープロスぺクターが有名で、成功という領域を超え、最早世界的な大種牡馬と呼ばれるまでになっています。
これらの新種牡馬の種付け配合の参考にしてもらうために。毎年2月頃北海道日高地域を中心とした馬産地の牧場を会場として、新種牡馬展示会「スタリオン・パレード」が行われています。
現役種牡馬
生国 | 種牡馬 | 父馬 | 母馬 |
日本 | ロードカナロア | キングカメハメハ | レディブラッサム |
日本 | キズナ | ディープインパクト | キャットクイル |
日本 | ルーラーシップ | トニービン | エアグルーヴ |
日本 | モーリス | スクリーンヒーロー | メジロフランシス |
日本 | エピファネイア | シンボリクリスエス | シーザリオ |
日本 | ダイワメジャー | サンデーサイレンス | スカーレットブーケ |
日本 | オルフェーヴル | ステイゴールド | オリエンタルアート |
アメリカ合衆国 | ヘニーヒューズ | ヘネシー | メドウフライヤー |
イギリス | ハービンジャー | ダンシリ | ペナンパール |
日本 | キタサンブラック | ブラックタイド | シュガーハート |
日本 | スクリーンヒーロー | グラスワンダー | ランニングヒロイン |
アメリカ合衆国 | ドレフォン | ジオポンティ | エルティマース |
オーストラリア | キンシャサノキセキ | フジキセキ | ケルトシャーン |
日本 | エイシンフラッシュ | キングズベスト | ムーンレディ |
日本 | ミッキーアイル | ディープインパクト | スターアイル |
日本 | リオンディーズ | キングカメハメハ | シーザリオ |
日本 | ジャスタウェイ | ハーツクライ | シビル |
アメリカ合衆国 | シニスターミニスター | オールドトリエステ | スイートミニスター |
アメリカ合衆国 | パイロ | プルピット | ワイルドヴィジョン |
日本 | ゴールドシップ | ステイゴールド | ポイントフラッグ[ |
日本 | ブラックタイド | サンデーサイレンス | ウインドインハーヘア |
フランス | バゴ | ナシュワン | ムーンライツボックス |
去年の種牡馬総賞金ベスト6とその特徴
- ディープインパクト
- 激しい気性のため、ゲート難がありますがそれを補うに余りある圧倒的な末脚が魅力です。
- 瞬発力と持久力を併せ持っているため、自力で動ける2400m以上に特に強さを発揮します。
- 産駒は早熟型とも言われており、芝GIで4歳以上の1番人気は意外と勝てないというデータもあります。
- ロードカナロア
- ロードカナロアはキングカメハメハの後継で、産駒は1200m~1600mを得意としています。
- 自身もスプリンターズステークス、安田記念等を制しており、2013年にはJRAの年度代表馬にも選出されました。
- また、産駒は新馬戦から重賞までクラスを問わず好走しています。
- 弱点を挙げるとすると距離ですが、代表産駒であるアーモンドアイのように能力の高さでこなしてしまう場合もあります。
- ハーツクライ
- ハーツクライの産駒は芝の長距離適性があり、スタミナ型なのが特徴です。
- ハーツクライで思い出すのは、2005年の有馬記念でした。
- このレースでハーツクライの豊富なスタミナと力強さを再確認させられました。
- これは近年の産駒である2022年のダービー馬、ドウデュースにも引き継がれています。
- また、注目すべきテータとして、産駒の重賞優勝の約4割が東京競馬場であるというデータもあります。
- キズナ
- キズナはディープインパクトの後継種牡馬の1頭で、2022年は産駒のソングラインが安田記念を制しました。
- 2021年はアカイイトがエリザベス女王杯を勝つなど、どちらかといえば牡馬よりも牡馬の活躍が目立ちます。
- また場格が大きいため短距離向きといわれていましたが、近年は芝であれば距離は不問で活躍しています。
- ダートでは1700m・1800mでの好走が顕著なため、芝からダートに転向してこの距離で出走した時が狙い目です。
- ドゥラメンテ
- ドゥラメンテはキングカメハメハの後継種牡馬で、2022年に初めて父を抜き、ランキング5位となりました。
- 生涯成績は9戦5勝2着4回と、連対パーフェクトの成績で、皐月賞・ダービーのクラシック2冠にも輝いています。
- 産駒で牡馬は中距離以上に適性があり、右回りを得意としています。
- また、牝馬は1600m~2000mが強いので、距離を短縮してきたときが狙い目となっています。
- キングカメハメハ
- キングカメハメハは、2010年2011年で種牡馬ランキング1位となりました。
- サンデーサイレンス系以外の馬がリーディングサイヤーになったのは、1994年のトニービン以来16年ぶりという快挙でした。
- 競走馬時代は2004年に1600mのNHKマイルカップ、2400mのダービーを勝って変則2冠として話題になりました。
- 近年は衰えが見えてきて、種牡馬として地位も産駒のロードカナロア・ドゥラメンテに明け渡すようになりました。
- 産駒の評価は1枚切り落とし、当日の気配重視で予想を組み立てるのがいいかと思います。
繁殖牝馬
繫殖牝馬とは、仔馬を産むために牧場に繁養されている牝馬のことで、肌馬やブルードメアとも言います。
競走馬の生産牧場にとって、繁殖牝馬の存在そのものが生産牧場の機能です。
繁殖牝馬は牧場に繫養され、2月から7月にかけて一定の周期で発情します。
発情した機会を捉えて牧場が契約した種牡馬のいる「スタリオンステーション」などに連れて行き、種牡馬と交尾させることで種付けをします。
種付け後、1ヶ月ほどで受胎の有無が確認でき、出産後は1週間ほどでまた発情し、新たな種付けを行えるようになります。
牝馬が発情していない時期に牡馬が近寄ると後足で蹴ったりすることがあり、高価な種牡馬に怪我をさせることになりかねません。
このような事態を避けるために牧場や種牡馬繋養施設が飼っているのが「当て馬」です。
BMSとは?
BMSは「Broodmare Sire(ブルードメサイアー)」の略で、競走馬の母馬の父馬、人間でいう母方の祖父にあたる馬のことです。
「ブルードメア」は「繁殖牝馬」を意味し、「サイアー」は「種牡馬、父馬」を意味しています。
競走馬生産者の間では、父馬、母馬、ブルードメサイアーが競走馬の能力に強く影響を及ぼすと言われ、ブルードメサイアーとしての勝利回数、入着賞金額を集計したランキングも存在します。
日本における優秀なブルードメサイアー
- トウルヌソル
- ヒンドスタン
- ネヴァービート
- ノーザンテースト
- マルゼンスキー
- トウショウボーイ
- トニービン
- サンデーサイレンス
三大始祖と世界の血統
現代の世界中のサラブレッドは父系の血統をたどっていくと、すべて3頭の馬にさかのぼることができます。
この3頭の馬をサラブレッドの3大始祖といいます。
馬名は「ダーレーアラビアン」、「ゴドルフィンアラビアン」、「バイアリーターク」です。
ダーレーアラビアンからエクリプス系
90パーセント以上もの占有率を誇る大父系
ダーレーアラビアンは推定1700年の生まれで、オスマン=トルコのアレッポに駐在していたイギリス領事、トーマス・ダーレーがアラブの族長から買い取って、本国に送ったといわれています。この父系はダーレーアラビアンから数えて5代目、エクリプスによって活気づきました。このためエクリプス系とも呼ばれ、現在、90パーセント以上もの占有率を誇る大父系に発展しています。
エクリプスは1764年生まれで、6・7歳時に出走して単走を含み26戦全勝の成績を残しました。
「エクリプス1着、他はどこにも見えない」の話はあまりにも有名ですが、全レースにおいてこのような勝ちっぶりを示したのです。
気性が極めて激しく、1度装鞍すれば、数日間そのままにしておかざるをえなかったといわれてます。
もっとも、エクリプスの直系子孫がすぐに勢力を伸ばしたわけでなく、19世紀のはじめまではバイアリーターク系と互角でした。
勢力を広げるのはその後のことで、1881年に誕生したセントサイモンがその大きな原動力となりました。
以後、差を広げる一方となりましたが、ファラリス系、ブランドフォード系、ゲインズボロー系、ハイペリオン系、プリンスローズ系、ネアルコ系、ナスルーラ系、ノーザンダンサー系、リボー系、ロイヤルチャージャー系、ネイティヴダンサー系、ミスタープロスペクター系などが有名です。
このうち、とくに20世紀なかばに登場したネアルコは、セントサイモン以上の規模で血統革命を巻きおこし、ダーレーアラビアン系の今日の圧倒的優位を不動のものにしました。
近年、ネアルコ系から派生したナスルーラ系、ノーザンダンサー系が大繁栄しましたが、日本競馬史上にさん然と輝く足跡を残したサンデーサイレンスや、これと覇を競ったブライアンズタイム、トニービンも、同じネアルコの流れをくんでいます。
ゴドルフィンアラビアンからマッチェム系
1748年に生まれたマッチェムによって大きく発展
ゴドルフィンアラビアンは推定1724年生まれで、北アフリカのバーバリーが出生地といわれています。
そこがアラブではなく、バルブだというので、ゴドルフィンバルブと記述している本もあるようです。
数奇な運命をたどった馬で、後世に伝わったエピソードには事欠きません。
モロッコ皇帝からフランスのルイ14世に献上されながら、その後何故かうらぶれてパリ市中で散水車を引く荷役をやっていたとも言われています。
現在、3大父系ではダーレーアラビアン系が圧倒的な優勢を誇っていますが、発展の足掛かりを作ったエクリプスの母の父が、このゴドルフィンアラビアンなのです。
エクリプスの母の父に入って手助けしたが為に、自信の父系発展が犠牲を余儀なくされたとも言えるでしょう。
この父系は父祖のゴドルフィンアラビアンから数えて3代目、1748年に生まれたマッチェムによって大きく発展しました。
そのためマッチェム系と呼ばれますが、マッチェム自身はエクリプスのような偉大な競走馬ではなく、種牡馬として期待されていませんでした。
しかし、産駒は優れた競走馬や種牡馬が相次ぎ、とくにコンダクターがトランぺッターを世に出して、現在までの流れを作りました。
ヨーロッパでは常に傍流に甘んじてきたマッチェム系ですが、スぺンドスリフトがアメリカで父系を大きく発展させ、現在に至っています。
スぺンドスリフトはアメリカでリーディングサイヤーとなり、仔のヘイスティングも同じくリーディングサイヤーとなりました。
その仔のフェアプレイから出たのが、アメリカの歴史的名馬マンノウォーです。
持込馬の月友が大成功↓ことで、日本でもマンノウォーの名は古くから知られていました。
月友は日本ダービー馬を3頭出したほか、ミツマサ、ツキカワらを出し、日本の生産界に大きな足跡を残しました。
現在、その父系は途絶えていますが、母系に入ってもなお影響力を残しています。
成功種牡馬のサクラユタカオーを出して、名牝系の祖となっているスターロッチの母も月友の産駒です。
フランスでもウォーレリックを通してこの系統は栄えましたが、それらの子孫が日本にも入り、ヴェンチア、ミンシオ、シルバーシャークらが大成功しました。
日本ではクライムカイザー以降、マンノウォー系からタイトルホースが途絶えていましたが、2004年、サニングデールが膝微差に高松宮記念を勝ちました。
父のウォーニングは欧州の名マイラーで、インリアリティ、ノウンファクトの流れを汲んでいます。
種牡馬としても海外で高い実績を残し、それから日本に輸入されたものです。
バイアリータークからヘロド系
ヘロドによって発展したバイアリーターク系
バイアリータークは推定1680年の生まれで、イギリスがハンガリーでトルコと戦争をしたとき、ロバート・バイアリー大尉が捕獲し、この馬名がつけられました。
その後、大尉はこの馬で武勲を立てたといいわれています。
もっとも、種牡馬としては優秀でなく、すぐに消えてしまいそうな父系でした。
しかし、バイアリータークから数えて5代目、ヘロドの活躍によって消滅を免れたのです。
ヘロドはエクリプスと同じカンバーランド公の生産馬で、1758年に生まれ、22歳まで生きました。
前肢が弱く、ほかにも故障があって特記すべき競走成績はありません。
しかし種牡馬となったヘロドは、一時期、エクリプスと並び称されるほどの立派な成績をあげました。
ヘロドによって発展したバイアリーターク系は、まさに飛ぶ鳥を落とす勢いでした。
ところが、これだけの繁栄がまるで幻であったかのように、19世紀後半になると急速に衰退していきます。
アメリカが誇るレキシントンの系統も、後継が育たずあっさりと消滅、ヨーロッパも同様で一時は絶滅の危機にすら落ち込むことになります。
ヨーロッパではリュティエの系統、ロレンツァチオの系統が残っていますが、大きな復活の兆しはありません。
ザテトラーク系にいたっては、ほぼ消滅状態となっています。
日本に輸入されたパーソロンは、三冠馬シンボリルドルフ、天皇賞馬メジロアサマによって受け継がれ、トウカイテイオー、という2頭の内国産スターホースを生みました。
トウカイテイオーは種牡馬となってトウカイポイントを輩出しました。
またダンディルートの血はビゼンニシキによって受け継がれ、名マイラーのダイタクヘリオスを出しています。
このダイタクヘリオスも種牡馬となって成功し、ダイタクヤマトを出しています。
マイスワローの血もラッキーキャストを通して、海外遠征で重賞制覇を成し遂げたフジヤマケンザンを出しました。
よく耳にする血統とその特徴
競馬初心者の方でも知っておきたいメジャーな血統というものがいくつかあります。
サンデーサイレンス系
競馬ファンならこの名前は聞いたことがない人はいないというほどメジャーな馬で、1995年から13年連続でリーディングサイヤーを獲得し、現在の日本の競馬の主流になっている系統です。
特徴としては、まず「芝が得意でダートが苦手」で、軽い馬上で瞬発力やスピードをいかして他馬を抜き去っていくタイプです。
また、気性が激しい面があり、もちろんマイナス面でもあるのですが、勝負根性の強さにもつながっており、勝ちに対する執着が強い馬が多い傾向にあります。
主な産駒としてはディープインパクト、ステイゴールド、マンハッタンカフェ、ハーツクライ、スペシャルウィークなどがいます。
サンデーサイレンス系の良い面を見事に受け継いだディープインパクトを筆頭に各馬の産駒も活躍しています。
ディープインパクト産駒はスピードと瞬発力に優れており、また中長距離を走り切るスタミナもあります。
ステイゴールドはサンデー系が苦手な重たい芝でも強く、ハーツクライ産駒はダートも芝も行ける万能型と言われています。
ノーデンサンダー系
特徴としてはパワーがあるのでダートや悪天候の道悪にも強く、短距離から中距離で活躍している馬が多いです。
一方の長距離は苦手なので2000mまでで考えても良いと思います。
主な産駒といえばメジロライアンやマルゼンスキー、フサイチコンコルドなどがいますが、近代の馬で言えばダート戦で無類の強さを誇ったクロフネでしょう。
パワーがあるので札幌や函館競馬場などで使われている洋芝でも力を発揮できます。
クロフネ産駒の芝からダートへの転向などは狙い目です
ナスルーラ系
1950年代からヨーロッパやアメリカで活躍してきた馬で、世界で最も反映していた系統の1つです。
そのため、系統といっても多岐にわたるため絞るのは難しいですが、本来の素質は高いスピード能力を持っている血統です。
近代の日本ではサンデーサイレンスが主流なのであまり名前を聞いたことが無いと思いますが、ナスルーラ系の代表格といえるのはトニービン、サクラバクシンオー、タマモクロス、ショウナンカンプ、ジャングルポケット等でしょう。
芝の短距離戦で優れた成績を収めており、短距離で活躍する馬が目立ちます。
その反面でダートは苦手で、中距離のレースとなると勝ちきれない印象があります。
ミスタープロスペクター系
アメリカで生まれた血統で、競争成績はイマイチでしたが、種牡馬になって大成功した馬で、アメリカ競馬の血統の主流と言っても過言では無いくらいの系統です。
特徴としてはダートで活躍している馬が多いことです。
桁違いのパワーを持つ馬が多いためダートはもちろん、近年では芝もこなせる馬も多く生まれています。
一方の瞬発力やスピード面ではやや物足りない部分があり、日本の芝だとキレ負けすることも多々あります。
この系統で最も有名な馬は日本ダービーの勝ち馬キングカメハメハでしょう。
その他にもアドマイヤムーン、サウスヴィグラスなどがいます。
またミスタープロスペクターの祖父であるネイティブダンサーの系統も有名で、こちらもダートで活躍した馬が多いイメージですが、芝でも活躍しており、エルコンドルパサーやオグリキャップなどがいます。
以上、紹介したこれらの血統や特徴を最低限知っておくと血統予想も可能になるので、ぜひチェックしてみてください。
配合
ニックスとは
ニックスとは配合上相性がいいとされている肌馬と種牡馬とのそれぞれの父系血統の組み合わせの相性のことを言います。
有名なニックスとしては父トニービンとノーザンテースト牝馬で 父ダンジグと母父リボー系などが挙げられます。
またニックスの父母反対の組合せを「返しニックス」と言います。
ただし有効な場合と有効でない場合があるとされている。
また反対に相性の悪い組合せを「逆ニックス」と言いますが、すべての結果が当てはまるものでもありません。
インブリード
血統表で5代前までに同一の祖先を持っているような配合のことで近親交配ともいいます。
インブリードによる効果は、その祖先によって伝わる能力に大きな違いが出てきます。
また、影響力のある祖先の血量の濃さによって、能力の伝達に差が出るとも言われています。
インブリードによる弊害としては、近親配合の影響からくる体質面の弱さや、気性難などが上げられます。
インブリードの比率が18.75%になった場合を奇跡の血量と呼ぶことがあります。
どういった場合にこの18.75%になるかというと、5代前までの血統を考慮した場合,父と母からはそれぞれ50%ずつの血を受け継ぐことになります。
父の父,父の母,母の父,母の母からはそれぞれ25%の血を受け継ぐことになります。
このように計算していくと,例えば父の父の父の父の父からは3.125%の血が遺伝していることがわかると思います。
したがって、
- 1代前:50%
- 2代前:25%
- 3代前:12.5%
- 4代前:6.25%
- 5代前:3.125%
の血をその仔が受け継ぐことになります。
奇跡の血量と呼ばれる18.75%になる組み合わせは、例えば4代前にハイペリオンを祖にもつ父と3代前にハイペリオンをもつ母から生まれた仔は、ハイペリオンの奇跡の血量18.75%を持つ仔ということになります。
この場合,ハイペリオンの3×4と呼ばれたりします。
3×4の場合のみ、奇跡の血量だと思っている人も多いようですが実際は3×5×5でも奇跡の血量になります。
長所
質の高い今のインブリードは質の低い馬の遺伝子の占める割合を減らす意味があります。
望ましい特徴を持った優秀な馬が血統表に多く重複して現れることにより、子孫にその馬の特徴が伝わる可能性が高くなります。
インブリードはアウトクロスよりも遺伝子の組み合わせの数が少ないため、アウトブリードよりも祖先の性質を伝えやすいです。
遺伝的に均一になりやすく、特徴が掴みやすいです。
短所
ホモ遺伝子がすべて望ましい性質を持っているわけではなく、望ましくない性質がインブリードによって表に出てくることがあります。
また劣性遺伝子による遺伝病になる可能性が高く、遺伝的に均一になりやすく、勢いが弱いです。
血量が50%を超えた場合は危険な配合となり、仔が生まれないか、生まれたとしても虚弱体質の仔になってしまう事が多いようです。
アウトブリード
アウトブリードとは、インブリードとは逆に産駒が持つ血統内に同じ祖先がいない場合の配合のことを言います。
一般的に5代内に祖先がいない場合を指しますが、6代・7代前まで拡張して論じられることもあるようです。
実はサラブレッドの血統をさかのぼるとたった3頭の種牡馬と、たった10数頭の繁殖牝馬に行き着きます。
したがって、ほとんどのサラブレッドが7代までにインブリードがある場合が多いことは確かです。
ですから7代の血統でアウトブリードである馬はめずらしいことになります。
アウトブリードの馬はインブリードの馬と比べて、インブリードによる弊害が全く存在しないので、健康な仔を作りやすいことになります。
長所
健康で丈夫な子供を作りやすく、繁殖力が強です。
インブリードに比較して遺伝子の組み合わせが多いのでバラエティに富んでいます。
短所
ヘテロ接合体の遺伝子型をもつ比率が高いので,遺伝力がインブリードよりも弱いです。
遺伝子の組み合わせが多いので,均一性が無く,性質がバラバラです。
インターナショナル・アウトクロスとは世界の異なる環境の下で発展している血統を選択して交配することで、世界の各地で遺伝子の組み合わせはユニークなものになり、違う遺伝子型の組み合わせによってアウトクロスを作り、新しく活気のある配合をめざします。
まとめ
今回は血統について紹介していきました。
普段の競馬予想に血統の知識をプラスしてみると、また違ったものが見えてきたり、より深く競馬予想をすることができると思います。
また、今回の記事では紹介していない血統ももちろん複数存在しますので、もし気になった方は是非チェックしてみてください。